やまとうたは人の心を種としてよろづの言の葉とぞなれりける──日本の歌が人の心を種として、たくさんの言葉となって表れたように、言葉には人の思いが沁み込んでいる
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#09616tatsu

 廻船問屋奉行所瓦版屋の話は、前々回の1/29「報道されないニュース─新聞とテレビの歪み」で終わりにしたつもりだった。

 廻船問屋が見事(?)奉行所のお縄を逃れ、瓦版屋が地団太踏んで悔しがっているのをテレビニュースで見ていた。
 「大山鳴動して鼠一匹だな」
 私が言うと子供が? という顔をした。

 「あれ、知らないの? よく使われる慣用句なんだけど・・・」
 「タイザンメイドウ・・・?」
 「タイザンは大きな山、メイドウは大音響で揺れ動くこと・・・で、鼠一匹」
 「大きな山が鳴動したのに、鼠一匹しか出て来なかった・・・ってことだね」
 「そういうこと」

 前触れの騒ぎばかりが大きくて、実際の結果の小さいことのたとえ・・・と辞書には説明されている。
 結局のところ、あれだけ大騒ぎしたのに、廻船問屋は詮議の末、お咎めなしとなった。
 奉行所は急に沈黙し、あれだけ瓦版を賑わしたリーク情報もぷっつり途絶えてしまった。
 逃がした魚が大きかったのかどうかは解らないが、瓦版屋の悔しがりようは半端ではない。

 面白かったのは、ある瓦版屋の記事。
 廻船問屋と奉行所の二つの権力の対立は、両者への不信の増幅でだけであり、勝者はいなかった。敗者となったのは不信を募らせた町人ではないか? というもの。

 おいおい、瓦版屋! その急に引いたような、私たちはこの騒ぎには関係ありませんっていう態度はないだろ!
 騒ぎに火をつけて、周りで阿波踊り踊っていたのは、あんたらじゃないの。
 悪いのは廻船問屋と奉行所、被害者は町民です、騒ぎを煽った瓦版屋には責任ありませんという、まるで当事者ではなかったみたいな態度はないだろ!

 自分たちの責任については、「一方で報道批判も出たが、メディアも真相解明に努力を続ける必要がある」と他人事のよう・・・
 ここまで書いたから出所を書いておくが、今日の日経新聞朝刊1面の社会部長の署名記事だ。
 厚顔無恥という言葉は、政治家と官僚と新聞記者のためにある。
 ・・・いかん、マジになってしまった。厚顔無恥という言葉は、廻船問屋と奉行と瓦版屋のためにあるのでござる。

 でも、腑に落ちないな。ここからは、傘張り浪人の妄想・・・
 廻船問屋が奉行所の詮議に応じたあたりから、どうも胸騒ぎがした。
 これは廻船問屋と奉行所が手打ちをするための儀式なんじゃないか・・・

 殿様老中も廻船問屋に操られているという話でもあるし、奉行所だって殿様や老中に造反して良いことなどない。
 ここは廻船問屋を詮議した結果、埃・・・いや、鼠3匹しか出なかったということにしようじゃないか。
 まあ、瓦版屋にはひとつ大騒ぎしてもらって、町人の不満のガス抜きでもしてもらおう。

 その時から、それまで奉行所と全面対決すると言っていた廻船問屋の態度が急変した。
 奉行所に協力する、公平公正を求めると言い始め、詮議の後にお咎めなしとなると、奉行所の公平公正な詮議の結果だと・・・
 まあ、これは、傘張り浪人の妄想である。

 さて、大山鳴動して鼠一匹だが、もとは古代ギリシアの諺で、「山が産気づいて、(何ごとが起きるかと見ていたら)滑稽な鼠が一匹生まれた(だけだった)」というものだそうだ。


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